最近は朝目が覚めるとまず、西の窓から栗の木を眺めています。
昼はまだ夏のように暑いですが、朝夕は涼やかな風が吹くようになり、朝日を受けて緑色のイガがツヤツヤと光り輝いていたのが、少しくすんで茶色みを帯びてきたのが遠目にもわかるようになりました。
朝支度もそこそこに外に出ると、穏やかな秋晴れです。

梅の古木も葉の色を変えて、秋の支度をはじめています。
去年の今頃は栗の最盛期でしたが、今年はまだ2、3個しか採れていなく、焦るような気持ちで酔芙蓉の咲く小道を抜けて行きます。蜘蛛の巣に気をつけながら栗の木の下へ行くと、未熟なうちに落果した小さなイガに紛れて、ちらほらと中くらいのイガもあるようです。開いてみると1つだけ、ふっくらと成熟した栗が入っていました。

栗が2つ入ったイガは少なかったものの、拾い集めてみると、艶やかな良い栗が22個収穫できました。
この夏の暑さは苛烈で、雨も少なくて昨年と同じように実がなるのだろうかと心配していました。実際に、産地によっては収穫量が少ないとかサイズが小さいといったニュースも聞きます。昨年の収穫の時期も過ぎていよいよやきもきしていたところ、ほっと胸を撫で下ろしています。
思い返してみれば昨年も、酔芙蓉の咲きはじめた時期に初めての栗の収穫をしたのでした。
朝は淡い色合いをしているのに夕方には濃いピンク色に染まることから、酒に酔ったようだということで酔芙蓉と名付けられたこの花。八重の美しい咲き姿に魅せられて枝を手折り、あの手この手で水揚げしようとしたものの、しゅんと萎れて戻らず、手折らせてもらったのに活かせることができなかった罪悪感に打ちひしがれた記憶があります。
その時は知らなかったのです、こんなにきれいな花を咲かせるのはほんの数時間のことで、夕方には萎れてしまう一日花であるということを…。
同じ一日花でも木槿ほど花付きも良くなく、花期も短く。そもそも木槿は実際には二日花なので、比べても酔芙蓉は本当に花の命が短いです。蕾が美味しいようで、よく虫に食べられてもいます。それだけに開花に立ち会えた喜びもひとしお。花の後はセピア色をした綿になります。今年はリースの花材にしてみたくて、それも楽しみにしています。

我が家では、栗の季節の到来をしらせてくれる花です。
さて、栗ごはんにしようか、それとも栗あんにしようかしらと持ち帰った栗ですが、まずはやっぱり栗の渋皮煮になりました。洋酒をきかせたパウンドケーキにマロンパイ、シュトーレンに入れたりおせち料理のきんとんに飾ったりと、秋から冬にかけて栗の渋皮煮は大活躍です。いくらあっても困るということがありません。毎年、生栗が手に入る短い期間にできるだけ作って、瓶や冷凍庫に保存しています。

夜毎にとろとろと栗に火を入れるのはとても幸せな時間です。今年も栗仕事ができることに感謝を。
短い栗の季節、目いっぱい楽しみましょう!